筆者:安藤 俊英
平成30 年度の税制改正により、相続税における「小規模宅地等の特例」について、特例を受けることができる対象者の範囲の見直しが行われました。
「小規模宅地等の特例」は被相続人から相続等により財産を取得した場合において、高額な相続税を納めるため、保有している土地を売却しなければならない事態を防ぐこと目的として創設された制度になります。相続が発生した直前において、被相続人の居住の用に供されていた宅地や被相続人の事業の用に供されていた宅地などで、一定の要件を満たすものは、相続税の課税価格の計算上、評価額を80%(又は50%)減額することができる制度になります。
(1)改正前
以下の親族が相続により取得した財産のうちに被相続人の居住の用に供されていた宅地等がある場合において、一定の要件を満たすときは、その宅地等のうち330 ㎡までの部分については、相続税の課税価格が80%軽減されます。
(2)問題点
以下の親族が相続により取得した財産のうちに被相続人の居住の用上記③のいわゆる「家なき子」は、持ち家がなく親と同居していない相続人が、親の相続後に親の家に戻って住むことを配慮し設けられたものになります。しかし、この規定は相続開始の3 年より前に配偶者以外の親族や、自己が経営している会社などへ持ち家を売却することにより、意図的に適用の要件を満たし、相続税の負担を軽減することが可能となっていました。
(3)改正内容
上記の問題点のような、意図的な相続税の負担軽減を防止するため、次に掲げる者が「家なき子」から除外されることとなりました。
この見直しにより、意図的な適用が従来よりも厳しくなります。
(1)改正前
親族が相続により取得した財産のうちに被相続人の不動産貸付事業の用に供されていた宅地等がある場合において、一定の要件を満たすときは、その宅地等のうち200 ㎡までの部分については、相続税の課税価格が50%軽減されます。
(2)問題点
この特例の適用を受けるため、相続の直前に貸付用不動産を購入することにより、意図的に要件を満たして相続税の負担を軽減することが可能となっていました。
(3)改正内容
規定の趣旨に沿わない節税を防止するため、相続開始前3 年以内に貸付事業の用に供された宅地等については、貸付事業用宅地等の範囲から除かれることとなりました。
平成30 年4 月1 日以後の相続又は遺贈により取得する財産について適用されます。