筆者:高橋
個人所得税及び住民税の計算上、上場株式に係る譲渡損又は譲渡益と、非上場株式に係る譲渡益又は譲渡損とは相殺して申告することができますが、この取扱いが平成25年度税制改正により変更されました。具体的には、平成28年1月1日以後の譲渡より、上場株式等に係る譲渡所得等と非上場株式等に係る譲渡所得等が別々の分離課税制度とされるため、上場及び非上場間の損益通算ができなくなります。
事業承継の一環として行われる同族株主間の株式異動は、一般的には譲渡か贈与で行われますが、本稿では譲渡に焦点を絞ってお話をしたいと思います。
経営者等が保有する自社株式に多額の含み益があるケースで、かつ、含み損のある上場株を保有している場合には、上場株・非上場株に係る譲渡損益の通算が可能な平成27年中に売買を完了させることにより、譲渡益の圧縮と事業承継の両立が可能となります。
事業承継による株式譲渡が、父から子に対して行われるような場合には、事業承継だけでなく相続対策という側面も併せもつこととなります。
事業承継を検討されている経営者の方で、含み損のある上場株を多数有している場合には、自社株及び上場株の売買の必要性について、平成27年中の検討が望ましいといえます。