筆者:高屋敷 神楽
2019 年12 月12 日に、2020 年度の税制改正大綱が正式に発表されました。その中の一つで、事業会社やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)がベンチャー企業に投資した際の優遇税制(オープンイノベーション税制)が創設されます。企業が自社にない技術やビジネスモデルを持つベンチャー企業と協業して新事業に参入するよう、税制も後押しすることとなります。これまで投資に関する減税は生産性向上につながる設備やソフトウエアなど償却可能な資産が主な対象でしたが、今後は2 年間の期限付きではありますが、一定のM&A も投資に関する減税の対象となります。
昨今、IoT、ビッグデータ、ロボット、AI 等の技術革新による第4 次産業革命が進展し、製品のライフサイクルが短期化しています。このスピード感に対応していくためには、モノと情報、社会と技術、生産者と消費者など様々な繋がりにより新たな付加価値を創出する“Connected Industries”を生み出すことが重要であり、これを実現する手法として、社内外の技術、人材、ノウハウ等を活用し、迅速かつ効率的にイノベーションを実現する、いわゆる「オープンイノベーション」が有効とされています。
特に、大企業などの事業会社にとっては、従来の自前主義から脱却し、新規事業開発等において研究開発型ベンチャー企業の技術と成長力を取り込んでいくこと、そして研究開発型ベンチャー企業にとっては、自社のコア技術を大企業が持つ販路やマーケティング等のノウハウの助力を得て、より大きなビジネスへとつなげていくことが必要となっています。
しかしながら、我が国は未だにオープンイノベーションの取組、特に事業会社と研究開発型ベンチャー企業による連携が上手く進んでいない現状にあります。また、日本企業の内部留保は2018 年度で463 兆円円と7 年連続で過去最高を更新しており、この内部留保の有効活用が課題となっています。
このような問題意識の下、オープンイノベーションの実現及び企業の内部留保の有効活用の観点から、ベンチャー企業への投資につき減税措置が講じられることとなりました。
当該税制に係る主な要件等は以下の通りです。
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【取り扱い】
その事業年度の所得の金額を上限に、その経理した金額の合計額を損金算入することができます。
ただし、ベンチャー企業の株式を売却するなど、株式の取得から5 年以内に次の事由に該当した場合には特別勘定について益金算入が必要となります。
・ 経済産業大臣の証明が取り消された
・ ベンチャー企業の株式の全部又は一部を有しなくなった
・ ベンチャー企業から配当を受けた
・ ベンチャー企業の株式の帳簿価額を減額した
・ ベンチャー企業が解散した
・ その他一定の事由
当該税制では、2 年間のうちにベンチャー企業へ出資を行い5 年間保有することにより、投資額の約7.5%(損金算入額25%×税率およそ30%)分が減税(=利回りの上昇)となり、出資を行うにあたってのハードルが下がります。したがって、ベンチャー企業に対するM&A は今後より活発になることが見込まれます。