筆者:丸山
個人のゴルフ会員権の譲渡損の損益通算については、過去の税制改正において何度も廃止論が挙がりながら、いまだ継続されています。
今回は個人が所有するゴルフ会員権の譲渡による所得について、ご紹介いたします。
ゴルフ会員権の種類は大きく株券、預託金制、社団法人制に分かれます。
ほとんどは預託金制となっており、株券、社団法人制は歴史の古いコースに多くみられます。
〈預託金制のゴルフ会員権とは〉
① ゴルフ場事業者と会員契約を締結し、一定の間、一定の金銭を預託することにより、クラブ会員となります。
② ゴルフ場事業者と会員との間の継続的な施設利用契約であり、施設利用権及び預託金返還請求権を有し、年会費支払義務、入会時における入会金・預託金支払義務を負います。
預託金制のゴルフ会員権を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算は、その会員権の所有期間に応じて次のとおりとなります。
(1) 所有期間が5年以内のもの
譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(最高50万円)
(2) 所有期間が5年を超えるもの
{譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(最高50万円)}×1/2
通常、株式や不動産を譲渡して損失が生じた場合には、株式なら株式、不動産なら不動産の譲渡益としか損益の通算ができませんが、預託金制のゴルフ会員権の場合は他の所得(給与所得、不動産所得、事業所得など)と損益通算することができます。
ただし、ゴルフ場事業者が破産した場合など、通常の営業を継続していない状態での売却などのケースでは損益通算ができない場合がありますので注意が必要です。
預託金制のゴルフ会員権は、「預託金返還請求権」「プレー権」「年会費等納入義務」により構成されています。
バブル経済の崩壊後、ゴルフ場事業者が会社更生法による更生計画等によりゴルフ場の営業を継続しながら自主再建を図るなかで、預託金債権の一部又は全額をカットするケースが見受けられました。
預託金債権が100%カットされプレー権のみとなったゴルフ会員権を譲渡した場合の譲渡所得の計算上、取得費とされる金額が平成24年6月の東京高裁の判決により、これまでの取扱いが変更されることとなりました。
(1) 従来の取扱い
更生手続等の前後で資産の同一性が失われたと考え、更生手続等前の入会金相当額は、ゴルフ会員権の譲渡にあたり取得費とされず、譲渡所得の金額の計算上、切捨時の会員権の時価相当額を取得費とすることとされてきました。
(2) 東京高裁判決(平24.6.27)で取扱いを変更
①更生計画等の内容からプレー権が会員の選択等にかかわらず、更生手続等の前後で変更がなく存続することが明示的に定められていること、②更生手続等によりプレー権のみのゴルフ会員権となるときに、新たに入会金の支払がなく、かつ、年会費等納入義務等を約束する新たな入会手続きがとられていないこと、などプレー権が更生手続等の前後で変更がなく同一性を有していると認められる場合には、更生手続等前の入会金相当額を新プレー権の取得費として認める取扱いに変更されました。
(3) 還付手続
今回の取扱いの変更により、更生手続等前の入会金相当額が譲渡所得の金額の計算上、取得費として控除できることとなりました。
すでに申告済の所得税についても申告期限から5年以内であれば還付可能とされています。
ただし、取扱いの変更を知った日から2か月以内に更正の請求を行う必要があります。