筆者:橋本 慶介
現代のビジネスにおいては、販売管理システム、在庫管理システム、経理システム、人事管理システムなどのように様々なシステムが使用されています。それぞれのシステムは、それぞれの業務に合わせて機能が設計されています。しかし、これらのシステムがそれぞれ独立していると、それぞれの業務に関連するデータが別々のシステムに保存されることになります。例えば、販売管理システムには売上データが、在庫管理システムには在庫情報が保存されることになります。
このような場合、それぞれの業務に関連するデータを一元管理したいという要望が出てきますが、それぞれのシステムが独立しているため、そのままではデータを統合することができません。そのため、手動で転記する方法、システム間のデータをCSV 形式で受け渡す方法、システム間をAPI を利用してデータ連携する方法又はシステム間をデータ連携ツールでデータ連携する方法などによりデータを統合する必要があります。
今回のコラムでは、ユーザー企業で導入しやすいといわれている「データ連携ツール」の必要性、メリットとデメリットについて解説します。
システム間のデータ統合にはいくつかの方法がありますが、「データを手動で転記する方法」又は「CSV 形式でデータを受け渡す方法」でのデータ連携を行っている企業が大多数だと思われます。
データを手動で転記する方法は、転記のために人員を配置する必要があり、この人員を調達するための時間とコストがかかります。また、手動転記には誤りが生じやすく、それを修正するためにも時間がかかる可能性があります。さらに、データを扱う人員が多ければ多いほど情報漏えいのリスクが高まります。
CSV 形式でデータを受け渡す方法は、データ変換を行うツールを開発することにより、手動で転記するよりも時間とコストを抑えることができますが、データが平文で保存されるためCSV 形式のファイルが改ざんされる可能性が高くなります。改ざんされた場合は、それを検知することができず受け取ったシステムで誤ったデータが処理される可能性があります。
また、手動で転記する方法又はCSV 形式でデータを受け渡す方法はデータ連携に人による作業が必要となるため、リアルタイムでのデータ連携を行うことができません。
これらの問題を解消するためには、データ連携に人を介在させることなくシステム間で自動的にデータ連携する方法が必要となります。その主なものはAPI 連携やデータ連携ツールです。
API 連携は、アプリケーションプログラムインターフェース(API)を使用して、異なるシステムやプログラム間でデータをやりとりする方法です。API を使用することで、異なるシステムやプログラム間でのデータの取得、送信、更新、削除などが可能になります。API を使用することで、リアルタイムでデータを更新することができるため、アプリケーションの開発や連携に適しています。
一方、データ連携ツールは、異なるシステム間でデータを受け渡すためのソフトウェアツールです。データ連携ツールは、通常は事前に設定されたルールに従って、データの移動や変換を行います。データの移動や変換を自動化することで、手動処理のミスを防ぐことができ、効率的なデータ管理が可能になります。
API 連携はシステム間でデータをやりとりするための仕組みであり、データ連携ツールはそのやりとりを自動化するためのツールと言えます。両者は異なるアプローチを取っていますが、目的は同じであり、どちらもシステム間のデータ連携には欠かせない手段です。
データ連携は、現代のビジネスにおいて必要不可欠な要素です。手動で転記する方法やCSV 形式での受け渡し方法では、時間とコストがかかり、人為的ミスや情報漏えいのリスクが高まります。
そこで、データ連携ツールを導入することで、自動的でリアルタイムなデータ連携が可能になり、時間とコストを抑え、情報漏えいのリスクも低減することができます。しかし、システム間の規格が異なる場合や導入に必要な技術的な知識、監視や保守などのコストにも注意する必要があるため、導入にあたっては外部リソースを有効に活用することが重要です。