筆者:元安 美智
2023 年4 月7 日、金融庁は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」(以下、意見書)を公表しました。改定後の「財務報告制度に係る内部統制の評価及び監査の基準」(以下、内部統制基準)及び「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(以下、実施基準)は、2024 年4 月1 日以降に開始する事業年度からと適用されます。本稿では、本改訂の背景やポイント、中⾧期的な課題について解説します。
今回の改訂の背景としては、大きく次の2 つがあげられます。
このような内部統制報告制度をめぐる状況を踏まえ、内部統制の実効性向上を図るため、企業会計審議会の内部統制部会において審議・検討が行われました。当該審議に基づいて2022 年12 月に公表された公開草案を一部修正して、今回の意見書が公表されています。
内部統制基準及び実施基準の具体的な改正内容について、「Ⅰ.内部統制の基本的枠組み」、「Ⅱ.財務報告に係る内部統制の評価及び報告」、「Ⅲ.財務報告に係る内部統制の監査」の項目ごとに解説します。
内部統制部会の審議において、次の問題提起がありました。
これらについては、法改正も含む追加の検討が必要であるため、中⾧期的な課題とされました。下記についても、今後の動向について注視していく必要があります。
今回の改訂は、企業を取り巻く環境変化や国際的な動向に対応し、内部統制報告制度の実効性を高めるべく行われています。特に、内部統制の評価範囲の決定において、リスク・アプローチによるべきことが強調されている点は重要です。内部統制報告書の例示がQ&A から削除されている点からも、企業がどのようにリスク・アプローチを行い、評価範囲を決定したかについて、企業の実態に照らして適切に内部統制報告書に記載することが求められていると考えられます。年初の計画段階から、内部統制報告書での記載方法も見据えて、監査人とも適時に協議をしつつ、評価範囲の検討を行うことが重要です。