筆者:別府 和明
2023 年11 月20 日、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が第212 回臨時国会において成立し、これを受け、四半期報告書が廃止される等、今後の企業の決算情報の開示体制に大きな影響があります。
今回の改正は、金融商品取引法に基づく四半期報告書と取引所規則に基づく四半期決算短信について、内容面での重複や開示タイミングの近接について従前より指摘があり、コスト削減や開示の効率化の観点から、議論されてきたものです。
本コラムでは、四半期開示制度の改正点の概要と、適用時期について解説します。
金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループが2022 年6 月1 日に公表した報告書「ディスクロージャーワーキング・グループ報告-中⾧期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて-」では、四半期報告書と四半期決算短信を比較したとき、「足元の開示実務をみると、両者の間の内容面での重複や開示タイミングの近接が指摘されており、エンフォースメントなどを工夫することにより、両者の「一本化」を通じたコスト削減や開示の効率化が可能である。」との報告が示されています。
また、「一本化」については、四半期報告書に集約させる方法と四半期決算短信に集約させる方法とが考えられるところ、①四半期決算短信の方が開示のタイミングが早いこと、②四半期決算短信は、投資家への積極的情報開示が行われているため投資家に広く利用されており、また、一部の企業においては、その発表と併せて充実した決算説明資料を公表するなど、こうした積極的な開示姿勢の後押しも重要であること、③「正確性の担保」については、四半期報告書の形でなくても、四半期決算短信を臨時報告書として開示すること等の方法により確保することも考えられること等を踏まえ、四半期決算短信へ「一本化」することが適切と考えられる旨の提言がされました。
主な改正点は、①四半期報告書制度の廃止、②半期報告書の提出義務化、③四半期決算短信の取扱い、④公認会計士又は監査法人によるレビュー、となります。
改正の概要に記載したとおり、第1・第3 四半期の四半期報告書は廃止、及び第2 四半期は半期報告書としての報告に変更されることとなりますが、これらの改正は、2024 年4 月1 日から施行されます。
つまり、3 月決算会社であれば、2025 年3 月期については、第1・第3 四半期報告書の提出は不要となります。また、新制度の半期報告書を2024 年9 月末から45 日以内(上場会社の場合)に提出することとなります。
一方で、2 月決算会社等、四半期会計期間中に改正法の施行日を迎えることとなる会社については、施行日を跨ぐ四半期会計期間は、施行日より前に開始していることから、当該四半期報告においては従来どおり四半期報告書の提出が必要となり、 その翌四半期会計期間の四半期報告においては、四半期報告書の提出が不要となる点に注意が必要です。
四半期報告書の廃止に伴い、半期報告書や臨時報告書の法令上の開示情報としての重要性が高まることから、各種書類の公衆縦覧期間も延⾧されます(半期報告書については、現行3年であったものが5年になるなど)。
今回は四半期開示制度の主な改正点についてご紹介しましたが、施行日は2024 年4 月1 日であるため、いよいよ新制度での四半期開示がスタートします。四半期決算に入る前に、これから新たに必要になるもの、不要になるものを精査し、新制度に備えておくことが重要であると考えます。
今後も各種法令の改正、四半期決算短信に関する上場規則等の改正の動向を注視するとともに、各種情報のキャッチアップに留意する必要があります。