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コラム2024.12.1

【コラム】暗号資産の取り扱い

筆者:八木 優佳

はじめに

暗号資産(仮想通貨)については売買目的以外で保有するケースもあることから、令和6 年度税制改正により、一定の要件を満たすものは期末時価評価を不要とすることになりました。本稿では、暗号資産についての取扱いの概要及び令和6年度税制改正において改正された点についてご説明致します。

概要

暗号資産とは、インターネット上でやり取りできる財産的価値であり、銀行などの第三者を介することなく、国境を超えて少額かつ迅速に財産的価値を移転することが可能な決済手段として注目されているものです。暗号資産は国家や中央銀行などによる価値の裏付けはありませんが、ブロックチェーン技術や暗号化技術に基づき技術的に信用性が担保されています。

一般社団法人日本暗号資産取引業協会「暗号資産取引についての年間報告2023 年度」によると、現在世界で流通している暗号資産の種類は数万種類に達しています。最も有名な暗号資産はBTC(ビットコイン)であり、その2023 年度末時点の時価総額は過去最高の213 兆円に達しています。

法人税における取り扱い

(1)暗号資産の取得価額
対価を支払って暗号資産の取得(購入)をした場合には、購入時に支払った対価の額が取得価額になります。そのほか暗号資産同士の交換、マイニング(採掘)、分裂(分岐)などにより暗号資産を取得した場合の取得価額は、取得時点の価額(時価)になります。ただし、分裂(分岐)により新たに誕生した暗号資産の取得価額は0円となり、新たな暗号資産を取得した事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入すべき収益の額はないものとされています。
また、取得価額には購入手数料など暗号資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を含みます。

(2)暗号資産を譲渡した場合
暗号資産の売却(日本円に換金)、暗号資産での商品の購入又は暗号資産同士の交換を行う取引は、いずれも暗号資産の譲渡に該当します。保有する暗号資産を譲渡した場合には、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額が譲渡損益になります。

(3)暗号資産の譲渡損益の計上時期
暗号資産の譲渡に係る譲渡損益は、その譲渡に係る契約をした日(約定日)の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することになります。

(4)暗号資産の譲渡原価
暗号資産の譲渡原価は、「暗号資産の1単位当たりの帳簿価額×その譲渡をした暗号資産の数量」により計算します。1単位当たりの帳簿価額の計算は、移動平均法又は総平均法により算出することとされています(法定評価方法は、移動平均法であり、総平均法を採用する場合には、所轄税務署⾧に届出等が必要)。なお、この算出方法は暗号資産の種類等ごとに選定することとされています。

(5)期末評価額
内国法人が事業年度終了時に有する暗号資産のうち、活発な市場が存在するもの(市場暗号資産)は期末に時価評価し、その評価損益を当期の益金の額又は損金の額に算入します。時価評価金額は、その市場暗号資産の種類等ごとに次のいずれかの価格にその市場暗号資産の数量を乗じて計算した金額とされます。
①価格等公表者によって公表されたその事業年度終了の日における市場暗号資産の最終の売買の価格
②価格等公表者によって公表されたその事業年度終了の日における市場暗号資産の最終の交換比率×その交換比率により交換される他の市場暗号資産に係る上記①の価格活発な市場が存在する暗号資産とは、法人が有する暗号資産のうち次の要件の全てに該当するものをいいます。

(イ)継続的に売買価格等が公表され、かつ、その公表される売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること
(ロ)継続的に上記(イ)の売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること
(ハ)次の要件のいずれかに該当すること
  ■上記(イ)の売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること
  ■上記(ロ)の取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと

一方で、活発な市場が存在する暗号資産であっても、法人が発行し、かつ、その発行の時から継続して有する暗号資産であり、その発行の時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されている場合の暗号資産は、特定自己発行暗号資産とされ、期末時価評価の対象外になります。

改正による変更点

上記3(5)の期末評価額について、令和6 年4月1日以後終了事業年度から次のとおりの改正がされています。

(1)評価方法の選定
法人が有する市場暗号資産に該当する暗号資産で「譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産【※】」の期末における評価額が、原価法又は時価法のうち、その法人が選定した評価方法(自己の発行する暗号資産で、その発行の時から継続して保有するものにあっては、原価法)により計算した金額とされます。
【※】次の要件に該当する暗号資産をいいます。
①他の者に移転できないようにする技術的措置がとられていること等その暗号資産の譲渡についての一定の制限が付されていること
②上記①の制限が付されていることを認定資金決済事業者協会において公表させるため、その暗号資産を有する者等が①の制限が付されている旨の暗号資産交換業者に対する通知等をしていること

(2)評価方法の届出
上記の評価方法は、暗号資産の種類ごとに選定し、その暗号資産を取得した日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限までに、納税地の所轄税務署⾧に届け出なければなりません。評価方法を選定しなかった場合には、原価法により計算した金額が期末評価額とされます。

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